サードチルドレン。
初のシンクロでシンクロ率80%を記録。
第三使徒、第四使徒、ともに独力で殲滅。
初の二機同時作戦であるヤシマ作戦では、砲手を担当、一撃の下第五使徒を殲滅。
「ふんっ!!!ジョーートーじゃない!」
赤い髪の少女、アスカは拳を握り気合を込めた。今日はサードチルドレンとそして、作戦部長が来る日だからと、当の本人も意気込んでいた。
「聞くところによると、サードチルドレンは美少年だというぞ?」
リョウジは小耳に挟んだ情報を面白げにアスカに話した。面白半分、これでアスカが自分のことを忘れてくれれば半分である。
リョウジには日本に想い人がいた、尤もその人物が自分のことをどう思っているかは定かではないが。
「ガキなんかにキョーミはないわ。私が好きなのは加持さんだけよ。」
はぁ、またか。リョウジはため息をついた。いい加減うんざりしていた。いくら自分が女好きであるからといって、中学生という子供に好かれてもちっとも嬉しくない。実際、リョウジにはロリコンの気はない。
「はは、日本に行けば俺なんかよりいい男がわんさかいるさ。」
リョウジはアスカをなだめながらフラグメントを見た。昔は幻といわれていたこれも今では日常必需品として先進国に出回っている。
フラグメントが光って反応している。恐らく彼らだろう。フラグメント搭載式ヘリで来ると言っていたから。
「もう少しでサードチルドレンがつくぞ。外で待ってるか?」
想いの欠片
「うわぁ、これがフラグメント式のヘリですか。静かですね。」
「よかったわね、シンちゃん。これ、乗りたかったんでしょ。」
シンジはヘリの窓から外を眺めた。ヘリの側面には大型フラグメントがついていた。恐らくこのフラグメントは物体を浮かせる力を持っているのだろう。
これがこの様な不思議な力を持っているのが何故かと聞かれると、詳しいことはわかっていないらしい。最近やっと基本原理が解明されてきたらしい。
シンジは自分のポケットに入っているフラグメントを取り出した。この小さな球体の物質の中にいろいろな力が詰まっている。その力によって値段も違ってくるらしい。このフラグメントは魔力を持っているという。少し値は張ったが、小遣いをこつこつ溜めて買ったらしい。
「シンちゃん、そろそろ着くわよ。降りる準備して。」
ミサトは空母が近くなってきたのを見計らってシンジに声を掛けた。今向かっているところはセカンドチルドレンとエヴァンゲリオン弐号機の待っている空母オーバーザレインボーだ。
「はい、ミサトさん。」
シンジは忘れ物はなかったかなと、あたりを見回した。が、忘れ物以前に、フラグメント以外何も持ってきていないのに気づきすぐに前を見た。
ヘリは静かに空母のヘリポートに着陸し、フラグメントを停止させた。シンジはポケットのそれを弄りながらゆっくりヘリを降りた。
セカンドチルドレンか、どんな子だろう。仲良くなれるといいけど。シンジの胸では期待と不安が渦巻いていた。
ヘリから降りると、不意に快活そうな声が聞こえた。
「ヘロォーミサト。久しぶりね。元気してた?」
「まぁね。あなたこそ大きくなったんじゃない?」
「身長だけじゃないわ。他のところもちゃーんと、大人になってるわよ。」
シンジは少女の突然の登場に少し驚いた。セカンドチルドレンがいるというのは聞いていたが、ここにいきなり来るとは思わなかった。
少女はシンジの前に歩いてきてシンジを睨み付けた。俗に言う、メンチを切るとか、ガンをつける、ガンタレ、そんな行動である。
「で?この子がサードチルドレン?」
少女がおもむろに指を指して言った。
「そうよ、碇シンジ君。」
彼女は品定めするように自分のことを見ている。いやだなぁ。とか思いながらもとりあえず自己紹介。
「えーと、碇シンジです。よろしく。」
「冴えない子ね。」
少女、アスカの予定では、この後目の前の少年シンジがこの言葉に怒り、喧嘩になって、自分が勝利。立場の圧倒的優位を知らしめるはずだった。
しかし、アスカの考えが至らなかった点が二つあった。
一つ。本日のアスカの服は黄色のワンピースだという点。
二つ。本日は特に風の強い日であり、時折突風が彼らをあおっていた点。
当然の結果といえば、当然の結果である。
ばさっ!!!
「…白?」
シンジは思わず口に出た言葉に赤くなって目をそらした。
「……。」
突然のことに事態把握ができていなかったアスカは、三秒後、再起動を果たした。
「きゃああああああ!!!」
スパーン!!!
快晴の空に乾いた音が一つ鳴り響いた。
それが、物語の始まりの合図だった。
かくして物語は始まった。
真実は物語とともに解き明かされていく。
幸福、不幸は物語とともに作られていく。
しかし、今は何一つありはしない。
ゼロからのスタート。
それが良い事か、悪い事かはワカラナイ。
しかし、彼らはこれから数々の想いの欠片を目にすることだろう。
もう一度断言しよう。
これは悲しい物語だ。
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