便利屋

第七話 トウジとケンスケ、地獄の特訓











「碇!!!すまんかった!!!お前の辛さも知らんで!!!」

「いや、別にいいよ。僕もなんかしこたま殴っちゃったし。お互い様ってことで。」

必死に謝ろうとするトウジをシンジがなだめている。

シンジはあまり気にしていない様子だ。っていうか本当に気にしてない。

「妹に怒られたらしいよ?私達を助けてくれたのはあのロボットなのにって。」

ケンスケが裏の事情をシンジに小声で話す。

「ふーん。ま、いいや。とにかく。君達にはしてもらいたいことがある。」

「なんや?」

「君達はネルフの機密を見た。いわば歩く機密だ。」

シンジが微笑みながら現状を説明する

「つまり、君達は他の組織に狙われるってわけだ。」

「「は?」」

二人は素っ頓狂な声を上げた。

「よって、君達には自分の身を守れるように特訓をしてもらう。コーチはこの僕だ。」













地獄の特訓が始まった。













朝の光がまぶしげな午前四時。薄暗いあたりに彼らの荒い息が響く

「ぜぇ…ぜぇ…。」

「はぁ…はぁ…。」

それを見てシンジが呆れたような声を出す

「…お前らたった20kmのランニングでへばってるのか?じゃあ次は腕立て1千回、腹筋1千回だ。」

どんどん増えていくトレーニング。

「…じ…地獄や…。」

「ああ…。」

二人は呆然としてつぶやいた

「おい!!!早くしろ、時間は少ないんだぞ。」

「「わ、解りましたコーチ!!!」」

「いい返事だ。」









ちなみに何故シンジが怪我をしているのにここにいるかというと









「あ!!!碇君また居ません!!!看護婦長!!!」

「あのガキ…又逃げやがって…。」





看護婦達の目を欺いて逃げ出していた。

数年前の話だが

彼が戦時にスパイに行ったとき

一度は戦時の兵士達に見つかったのだ

しかしその頭脳によって

兵士達を欺き

無傷で逃げおおせたのであった

ちなみに逃亡中の彼とであって負傷した兵士の人数はざっと百人。

施設の隅から隅まで走り回ったので、その分出会う兵士も多かった。

そして、逃亡中の彼に暗殺された兵士の数十人

逃亡中の彼を見つけ射殺しようとするが、返り討ちにあって死亡した兵士の数三十人

走っているシンジに足蹴にされた兵士の数五人

走っているシンジを捕まえようとしたがそのまま引きずられ、およそ5kmほどずるずると引きずり回された兵士の数一人

と、こんな感じの戦果を彼は上げているのだ。

そんな彼にしてみれば、しがない病院の看護婦など出し向くなど朝飯前だった











そして、そんな感じで彼らがトレーニングにいそしんでいたころ

シンジが逃げ出した報告はミサトにも届いていた

「はぁ…シンジ君にも困ったものね…。」

そのときミサトはいつものようにリツコの部屋で話をしていた

自分の仕事の八割をあの眼鏡オペレーターに押し付けて…。

それを見たリツコは、こめかみに青筋を浮かべながら

「…あなた…仕事は?」

と言った。

しかし

「あ?もう終わってるわよ?」

と軽く流されてしまった。





「葛城さーん!!!僕一人じゃ無理ですよ!!!」

どこかで、数千枚の書類を押し付けられた某眼鏡オペレーターが

泣き叫んだ

…かわいそうに…

















そして、早朝の時刻も過ぎ

太陽も昇りきったころ

その特訓はとりあえずの終わりを告げた

当然明日も、その次の日もある。

「よし、じゃあこれで終わり。」

「「……」」

一つ言って置くが、シンジはケンスケ、トウジの二人にただただ激をとばし、黙って立っていた訳ではない

シンジだって怪我しながらもちゃんと自分ができるトレーニングはやっていた

傷に響く?

彼は、いつもそれ以上の痛みを経験しているのでそれは痛みのうちに入らないのだろう。

しかし、先日の戦闘

あれは彼にとっても死ぬほど痛かったようだ

そりゃ。腕がもげ、腹部に直径5cmほどの風穴が開いたのだから

半端ではないだろう

常人なら一瞬で意識を持っていかれないほどの痛みだ

そんな中でもあの使徒に特攻した行動力には恐れ入る。

ちなみに怪我は全部ネルフの医療技術によって復元している。

何でもクローンの応用で、怪我した周りの細胞を人為的に増やしてつなげるのだそうだ

もちろん右腕もくっついている。

尤も、今は感覚があまりなくてシンジも困っているが。

「じゃあ、ちゃんと学校には行くこと。それもトレーニングのうちだ!僕も行くからな、くれぐれも学校を休もうとか考えるなよ!」

「…い、碇…」

「なんだ?」

「も、もう体が動かへん。」

時間にして、三時間

ぶっ続けで動き続けた彼の体力は限界を迎えていた。

っていうか、運動って言うよりも

自分を体を苛めていた。

ちなみにトレーニングの内容は

ランニング20km

腕立て腹筋1千回

休憩をかねた戦闘に関する講義

実戦訓練

ランニング5km

最初のランニングはかなり速いペースである。

二人が短距離で走れるはやさの、八割ほどの速さで走っていた。

実戦訓練では、シンジが左腕だけで

トウジとケンスケには、模擬ナイフをもたせ

二人同時にかかって来いと言うことだった。

常に、さっきの講義で教えたことを頭に入れておけ

シンジはそれだけ言った。

講義で教えたことは

各打撃に対する防御と回避

殺気の感じ取り方

相手の次の行動、次の行動と先読みして戦闘する

と言うようなことだった

「…碇ぃ…マジでいかなきゃダメなのか?」

ケンスケがすがるような声を出す

「ああ。休んで家で寝てたら、明日地獄の筋肉痛で苦しむことになるぞ。」

「…そ、そんなすごいのか?」

彼はその痛みの程度を効いた

「体中に直径2cmの針を刺された痛みによく似てる。」

「げっ!!行くよ…。」

どうやらシンジはその痛みを経験したことがあるらしい。















そして、学校が始まる

生徒はいつものように各々の起きる時間に応じて、ばらばらに学校に来る

そして、そこには全身倦怠感に悩まされているトウジと、ケンスケの姿もあった

「…ケンスケ…。」

「なに?トウジ…。」

「わし…もう、怖いもんなんてないような気するわ…。」

「ああ、俺もだよ…。」

影を背負っているその姿は

人生の敗者かと思ってしまう。

そしてトウジが

「ああ、もうワシ寝るわ!!!お休み!!!」

と寝ようとしたころに彼は教室に入ってきた。

彼が教室に入るとともに、にぎやかだった教室が静かになる

そして、あたりからひそひそと彼を批判する声なのか言葉が聞こえる。

先日、トウジがシンジにぼこぼこにされた時から、その生徒達はシンジを特別視した

あるものは畏敬の念を抱き

あるものは悪意の念を抱き

あるものは軽蔑し

又あるものは殺意を持っていた

各々の感情を持っていた

しかし、どんなに軽蔑しようと、悪意を抱こうとも

学校でも喧嘩が強いとされるトウジを、有無を言わさずひれ伏させたのだ。

直接文句を言う勇気は誰も持っていなかった。

シンジはトウジの近くに歩み寄ると、思いっきりトウジの耳を引っ張った

「い、いたたたたたた!!何すんねん!!」

「寝るなと言ったろうが馬鹿者!!!」

「そんなこといっても、ワシこれが普通なんや!」

「なら直さんか!!」

クラスの生徒達はシンジと普通に話す当時を見て騒然となった。

まるで気の置けない友のような話し方だ。

あんなにシンジにぼこぼこにされたのに

普通に話している。

「おいおい、碇。見逃してやれよ。」

「いや、だめだ。」

ケンスケがなだめに入るが、聞き入れようとしない。

結局トウジは寝ることができないまま一日を終えたらしい。

















次の日も、その次の日も

特訓は続いた。

その特訓は二ヶ月も続き(その間に使徒の襲来とかいろいろあったけど。)

最初はランニングだけでへばっていた二人も

一ヶ月を過ぎたころにはもう余裕ですべてこなせるようになった。

彼らはシンジにナイフの扱い方、銃の扱い方(これはケンスケがかなり喜んだ)

そして、武器をもった相手に対する戦い方

おまけに、相手に気づかれないまま相手を殺す方法

そしてなぜか、自分の気配を消して相手に見つからないようにする方法

それらを教えてもらった。

特訓が終わったころには彼らは

普通の人間では足元にも及ばないほど戦闘能力が上がっていた。

そして、筋肉も、ありすぎてマッチョってほどではないがつき

しまった無駄のない体になった。

余談だが、シンジが実戦練習と言って、第三新東京市中で、不良に絡まれている女の子を助けまくったので

彼らはちょっとした人気者になった。

そのファンの中に某委員長が入っていたのはお約束。















トウジとケンスケはこれからシンジの途方にくれるような長い戦いに付き合っていかなければならない羽目になるのだが

それはまだまだ先の話である。


今日の舞台裏

マコT「はい、結構更新サボってたけど、心優しい読者の皆さんなら許してくれるよね。」
シンジ「なに?寝言ほざいてんじゃねぇよ!!!」
マコT「へぶぅ!!!」
シンジ「っていうか、今回結構無理があるだろ!!!」
マコT「ああ、トウジ君たち強くなりましたね。」
シンジ「どれくらいの強さだよ?」
マコT「力量にして、シンジ君のおよそ5%くらい。」
シンジ「…俺ってばどれだけ強いんだよ…。」
マコT「でも、トウジ君たちでは、戦時の兵士が二人以上居ると倒せませんから。」
シンジ「つまり、戦時の兵士だと、タイマンならやれるのか?」
マコT「そうです。では、次回予告。」
シンジ「迫り来る使徒の恐怖、ネルフが情報収集を怠ったときにその反動は来た。」
マコT「でわ、次回もお楽しみに。」  

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