便利屋
第四話 ヘボパイロット
「…碇、シンジだ。仲良くしてくれとは言わない。」
「…それだけですか?」
「ん?そうですけど。」
シンジは好奇心いっぱいの無数の眼の前で自己紹介をしていた。
シンジは学校が嫌いだ。
学校にいる間は仕事ができないし、
前の学校ではろくなやつがいなかったからである。
「えー、じゃあ洞木さんの隣の席が空いてますね。そこに座ってください。」
シンジはいつもの癖で音も立てずに歩いていった。
そう、まるで浮くように。
しかし誰一人としてそれに気づくものはいなかった。
(はぁ…サボろうかな?煙草もすいたくなってきたし…。)
どうやらシンジはニコチン中毒のようである。
(今日の晩御飯何にしようかな…。)
シンジはミサトの家に引き取られていた。
って言うか、無理やり住まされた。
席に着いたとたん、周りの生徒から無数の質問が飛んだ
「何処から来たの?」
「趣味は何?」
「彼女いる?」
「女性のタイプは?」
シンジは、女子生徒の質問には親切丁寧に答え、男子生徒の質問には
「ま、適当に想像しておいてくれ。」
だけだった。
ま、それは別の話…になるんだろう。
(碇君って素敵)
(そうよね…私アタックしようかしら…)
(あの女性には優しい態度…紳士だわ)
(もう、あのちょっと不良っぽいところが素敵!)
クラスの女子生徒の半分はシンジの虜になっていた。
数十分後…
シンジは屋上に来ていた。
口には煙草をくわえ寝転んでいる。
「ふぅ…。これからは楽になるな…
あれのせいで仕事できなくなるし…。」
うーん…ま、貯金は
何千兆とあるからいいけど…
問題は退屈しないかだよなぁ…
って言うか今までのお得意様同士よっかな…
そうなこと考えてる間に煙草の火は消えた。
「…もう終わりか…。」
そういってシンジが立ち上がろうとした時
バターン
という音と共に屋上のドアが勢い良く開いた。
「碇君!!!転校初日にサボって、その上煙草すわないでよ!!!」
「あれぇ?委員長じゃないか。数十分ぶり。」
「あれぇじゃ無いわよ…さっさと戻るわよ!!!」
「あぁ…待って、せめてあともう一本…。」
「ダメ!!!煙草は捨てなさい!」
「あぁーあと一本ーー。」
シンジは引きづられて行った。
ようやく教師の説教も終わり、席について一息ついたシンジに一通のメールが届いた。
「碇君があのロボットのパイロットってホント Y/N」
シンジはそれを見て、驚くこともなくマウスを取り
ドラッグ&ドロップ…
ゴミ箱に…
直行!!!
そして、しばらく経ったら
「ねぇ。本当なんでしょ?隠したって無駄よ Y/N」
それもゴミ箱へ。
そして三通目
「みんな知ってるのよ。 Y/N」
そこでだんだんうざったくなってきたのかシンジがメールを返した。
「知ってるなら聞かなくてもいいだろう?」
それは肯定を意味するもの。
そのメールにクラスは騒然となった
「ええええええええええぇぇぇぇぇぇ!!!」
そしてまたもや質問の嵐
「あのロボット何って言うの?」
「必殺技とかとかあるの?」
「しかし、彼よくまたこれに乗ってくれたわね。やっぱりプロは違うのかしら?」
「そうかもねぇー。」
リツコとミサトが話している。
目の前ではシンジが訓練をしている。
インダクションモード。
銃撃を最優先したモードである。
シンジはというと
「…はぁ、こんな訓練…簡単すぎるっての。」
100%の命中率を叩き出していた。
「彼、すごいわね。まるでエヴァに乗るために生まれてきたみたい。」
ミサトがそれとなくつぶやく。
リツコがそれに反論した。
「違うわ、あのこは多分戦うために生まれてきた…といったほうが正しいわね。」
「どゆこと?」
ミサトが当然の疑問を投げかける。
「彼、戦闘訓練…並みの人間じゃ勝てないくらい強いわ。うちの保安部に彼に勝てるような人間はいないわ。」
「マジ?彼何者なの?」
「それが解らないから私も苦労してるのよ。」
「ふーん。ま、それはいいんだけどさ。彼の携帯電話…。」
「どうしたの?誰からもかかってこないとか?」
「逆よ、逆。しょっちゅうかかってくるのよ、しかも女子生徒からばかり。
で、シンジ君がいないときに私が出るじゃない?すると…。」
「すると?」
「あなたは碇君の何ですか?なのよーもう、疲れたわ…。」
「彼やるわね…。」
このあとの彼女達の談話は数十分続いたようだ。
そして、その訓練から帰るとき。
「ミサトさん。」
「んー?何?」
「明日、綾波が退院して、学校へ来るんですよね?」
「ん?そうよん。」
「ふーん…楽しみだな…。」
その言葉に水を得た魚のごとくミサトが襲い掛かった。
「あーら、シンちゃんってば、レイがお気に…。」
しかしシンジの表情に固まった。
そう、それはおなじみゲンドウの「ニヤリ」笑いだったのだ。
(うっひゃー…嫌なもん見たわ…。)
それきりミサトは襲い掛かってはこなかった。
次の日。
(ん…綾波はいるな…。ちょっと声掛けてみるか。)
「おはよう、綾波。」
「……何か用?初号機パイロット。」
(うわぁ…なんか嫌われてるみたい…とほほ…)
シンジはなんでもないというと、足早にそこを去っていった。
そして席に着いた。
そして回りの会話を聞いた。
そこで気になる会話があった。
「相田君。鈴原にプリント、届けてくれた?」
「え?あ、ああ、あのプリントならまだだよ。あいつ、家にいないみたいでさ。」
「嘘ね。」
「ぎくっ。」
「相田君、心配じゃないの?仲良いんでしょ?」
「怪我でもしたんじゃないの?」
「まさか、テレビではけが人は一人もいないって。」
「いないはず無いだろ?爆心地見たろ?
十人や二十人じゃすまないよ。きっと死人だって。」
そのとき、ドアが開いた。
「あ、トウジ…。」
「鈴原…。」
「何や、仰山減ったな…。」
「あれの影響だろ?」
「まぁな、生でドンパチ見れるってよろこんどるのはお前だけや。」
「それより、何で休んでたんだ?」
その言葉にその少年は少し顔を曇らせた…。
「妹の奴がな…ビルの下敷きになったんや…。
うちはおとんもおじーも仕事で普段いてへん。
そやからわしがいてやらんと、あいつ病院で独りぼっちになってしまうんや。」
「…トウジ…。」
「しかし、あのロボットのヘボパイロット、頭くるわー。
味方にやられてたら話にならんわ!!」
その言葉にシンジは眉をぴくっと動かした。
相田と呼ばれた少年、相田ケンスケはひそひそ声でトウジに話した。
「そのことなんだけどな…あの転校生…あのロボットのパイロットらしいんだよ。」
「ほんまか?あのヘボパイロットがあいつなんか?」
またシンジが眉を動かした。
そしてシンジは立ち上がった。
音を立てずにトウジ達の元へ歩いていくと。
「やぁ、委員長。どう?元気?」
ヒカリはその言葉に少し頬を赤くして
「えぇ、元気よ。」
彼女、基本的に異性に話しかけれられることは少ないのだ。
「おい、転校生、ちょっと顔かしてくれへんか?」
「やだ。」
その取り付く島も無いシンジの返答に、トウジは冷たい怒りを放出する。
「何でや?」
トウジは静かに、しかし怒りを込めて言った。
「何で?それはこっちが聞きたいよ、
何で僕が、初対面の君のために、
無報酬で、わざわざ動かなきゃいけないんだ?
まぁ2万円ほどくれるんだったら、動いてやらないことも無いけどね?」
「何やと?」
「あいにく僕は疲れてるんだ。
用があるならここで頼むよ。」
「いいから来いって言うとるんや。」
「やだって言ってるだろ?」
トウジは我慢できなくなったのかシンジの胸倉をつかんだ。
その行動にヒカリが咎める
「ちょっと鈴原!!」
しかしトウジはとめなかった。
シンジは動じもせず、冷たい眼でトウジを見ていた。
「君がさっきから言ってるヘボパイロットっての、僕なんだけど。
僕嫌いなんだよね。
光の当たってる世界から一歩も出たことの無い素人が
知ったかぶって、人を批判するって。
謝ってくれる?」
トウジがさっき言った、「ヘボパイロット」
これはシンジの地雷を踏んだようだ。
「うるさいわい。おのれのせいでな、わしの妹は怪我したんじゃい!お前がちゃんと
闘わへんからなぁ。」
しかしシンジは冷たい眼をそらすことなく言った。
「だから何?」
いつの間にかクラスの生徒達は、この出来事を見ていた。
そのためこの言葉に、息を呑む音が聞こえた。
「…おのれは人類を救うために闘って「んなわけないジャン」…は?」
「僕があれに乗るのは、金のためさ。
依頼があったからあれに乗った。
命令があったから、あれと闘った。
あいにくと、君の妹を助けろなんて依頼は無かったもんだから。
悪いね。
無報酬だから、助けようとも思わないし、助けたくも無いよ。
それに僕はあの時意識が無かったんだ。」
その言葉にトウジは一瞬信じられないという顔をしたあと、
思い切りシンジの顔面を殴った…はずだったが
それは空を切り、代わりに自分が地面とキスをした。
首筋には冷たい感触がした。
周りからは息を呑む音が聞こえた。
女子生徒の悲鳴も聞こえた
教師が来たのか、シンジをとめる声も聞こえた。
ヒカリの悲鳴が聞こえた。
ケンスケのおびえきった声が聞こえた。
それでも必死でシンジを止めようとしてる声が聞こえた。
そしてシンジの冷たい声が聞こえた。
「悪いね。僕ってば訓練のせいで攻撃まがいのことされると、思わず反撃しちゃうんだ。」
そしてトウジはようやく首筋に当たる冷たいものの正体がわかった。
バタフライナイフだった。
シンジがいつも常用してる切れ味抜群のナイフ。
少しでも動いたら命は無い。
「う…うわぁぁ。」
トウジは悲鳴を上げた。
しかし動けるはずも無かった。
少しでも動くと赤い花を咲かせることになる。
徐々にナイフは離れていった。
そしてシンジがいるほうから、
ジャコン
といつもケンスケがもっている、エアガンに玉を充填するための音に似ている音が聞こえた。
しかしそれはその音よりもはるかに重く低い音だった。
バーン
トウジの頬の右20cmほどのところに穴が開いた。
その音に女子生徒も男子生徒も悲鳴を上げた。
トウジは声も出せなかった。
ドス
シンジの蹴りがトウジのわき腹に決まった。
「ガハっ!!」
トウジは息を勢い良く吐き出した。
「…悪いね…。反撃しちゃったよ。
これからは自分の行動に気をつけてね。
ホントに「初号機パイロット」…何?」
レイがシンジに声を掛けた。
「非常召集、先に行くから。」
シンジはそれを聞いて、我の帰ったような顔をするとすかさず。
「…行くか…。」
そしてシンジは音も立てずに走って言った。
あとには、シンジが起こした混乱だけが残っていた
後書き
どもマコTです。
えー、まとまりのない文章ですいません。
うっわー、シンジの性格が歪んでる…。
どうしよう…。
ま、いいや、次話もお楽しみにぃー。
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