便利屋

第零話 プロローグ


「師匠!!!」

勢いよくドアが開かれた。大きな叫び声とともに。

ドアの向こうには中性的な外見を持った少年が息も絶え絶えという風に立っていた。

まさに一大事という感じだ。その少年はこれまでにないことに大いに驚愕していた

声を掛けられた本人は、それほどの事でもないというように あっけらかんとした態度だ。

まぁ仕方のないことだろう、これが彼の性格なのだから。

しかし内心とてもあせっている、普段ならこんなに大声を出すことはないからだ。
「なんだ?シンジ。」

いたってシンプルに、それでいて合理的に彼、長瀬 コウジは答えた。
シンジと呼ばれた少年。本名を、碇 シンジという。
心の中ではこんなときでも涼しげな顔をしていられるコウジに呆れ返っていた。

心の中でおよそ50回ぐらいため息を吐いてからこういった

「あの糞親父から手紙が来たんですよ。」



彼らコウジとシンジの出会いは衝撃的なものだった。

父親に捨てられ駅のホームで延々となき続けている子供。これがシンジだ。

そして近くをちょうど通りかかったコウジが。

「泣いてちゃいい男が台無しだぜ?俺の取って置きを教えてやるから、ここはおとなしく泣き止め。」

なんというアバウトさだろう。まあ本人にとってはそれだけではなかったのだが。

そんなこんなでその日からシンジは預けれれている家から毎日コウジの家へ遊びに来るようになった。

彼はいろいろなことをシンジに教えた。

普通の子供じゃ経験したこともないようなことを教えた。

そしてその知識、経験をすべて自分のものにしたところで、彼から誘われたのだ。

「一緒に俺の仕事をやらないか?助手としてな。まあお前がやりたかったらの話だが。」

無論シンジは彼の仕事など知らなかった。

しかしシンジにも今まで教えてもらったことから判断はついたのだろう。
快く承知した。

シンジ7歳の夏だった。



シンジは瞬く間に彼の仕事をこなしていった。

彼の仕事とはずばり便利屋だ。

引越しの手伝いと言われたら手伝い、コンビニのバイトと言われたらそれをやり。

そして便利屋だからには、暗殺の仕事や破壊工作の仕事までもが回ってきた。

もちろん彼はこの仕事もらくらくこなしていった。

いつの間にかシンジは彼を「師匠」と呼ぶようになった。
シンジにとっての師匠は自分では絶対にかなわない相手であった。

しかしそれほどでもなかった。

確かに経験と言う点においては彼のほうが数倍優れている。

だが技術と言う点においてはシンジのほうがはるかに上回っていた。

5歳のころから格闘術から武器の使い方まで徹底的に教え込まれたのである。

…まあ自分の意思でそこまで覚えたのだが。

そのせいか、シンジの名前は瞬く間に裏の世界に広がっていった。

もともとコウジも裏の世界では有名だ。

「悪魔の便利屋」「仕事は必ずこなす」「仕事なら親友でさえも殺す」

そんなあだ名がついて、あることないこと尾びれ背びれついてうわさになっていた。

そしてそれにシンジが加わり

「便利屋の兄弟=悪魔の兄弟」と言われ恐れられていた。

もちろん本人たちはそんなことないと否定するだろうが。

とにかく着々と任務を遂行するさまは、そんな印象を人々に与えた。



シンジ12歳の冬。冬と言っても世紀末に起こったセカンドインパクトで日本は常夏の国になっていたが。

コウジは彼に課題を出した。

「これができたら、お前はもう一人前だ。自立してもいい。仕事をするとき俺に言わなくてもいいぞ。」

彼が出した課題は、戦略自衛隊に対する情報収集。

見つかればアウト。その時点で殺されるだろう。

と言うわけでシンジは戦時に行った。

そしておまけつきで見事にその課題をクリアし、一人前の称号と、師匠自作の小さなナイフを手にしたのだった。



自立した彼は、自分がやりたくない仕事は一切引き受けなかった。

それでいて女性には格安で仕事を引き受けた。

ませていると思うかもしれないが、これはコウジの教えでもあるのだ。

「美人からの報酬は金じゃねぇ。美人の笑顔、好意、涙。それが美人に対しての報酬だ。」

これが彼のモットーだった。彼は無類の女好きだった。

それがシンジにもうつったのだ。女好きとは行かなくとも、女性と男性に対する態度がぜんぜん違った。

シンジ曰く

「僕は、野郎より、女性のほうが好きですから。」

と言うことらしい。

そしてさらに彼にはあだ名がつくのだ。

「女に弱い悪魔の申し子」









「……で?お前はどうしたいんだ?」

「僕は親父のところに行って決着をつけたいと思うんですけど。」

話は現在に戻る。コウジとシンジの対談は2時間ぐらい続いた。

「いいのか?二度とここに戻れなくなるかもしれないぞ?」

「いいです。僕はそれでも自分の力でここに帰ってきますから。」

シンジは一歩も譲らなかった。

「まだ僕の中で、親父に認められたい気持ちが残ってるんですよ。  
その気持ちに決着をつけるために行きたいんです。」

この一言でコウジは折れた。

彼曰く

「俺は、お前のその言葉を待っていたんだ。後悔しないように行って来い。
 ま俺ももう少ししたら追っかけていくと思うからそのつもりで。」

だそうだ。








そして、とうとう出発のときが来た。この日はコウジの数少ない同居人もついてきた。

「シンジ、元気で。まあ私たちも後から行くんだけどね。」

「お前には世話になったよ、今だから言わせてくれ。ありがとうな。」

「シンジ君。元気でね。すぐに追いかけていくから。」

その言葉にシンジは少なからず感動した。

「マナ、ムサシ、ケイタ。じゃあ僕行くから。すぐに合えるといいね。」

彼らはシンジの成人課題?のときのおまけだ。かわいそうだったから救出したらしい。

コウジが最後に締めの言葉を発した。

「まあ、たまにしかできない旅行だ、俺らがいないあいだ、楽しんできな。」

シンジはその言葉に返事を返す。

「はい。じゃあ行ってきます。」

そしてシンジは駅のホームへ消えた。

三人の少年少女たちと、一人の中年…いやナイスミドルが残された。

こうして、始まりの鐘は叩かれた。

激動と、嵐の約一年間。彼らは想像すらしなかったろう。

しかしその中で全てを把握している人物がいたことを知るものはいない。






「いいんですか?コウジさん。引き止めなくて。」

「マナ…。全てはあいつが決めることだし。それに…。運命は1割くらいは最初から決まっているものさ。」

「ほんとにいいんですか?シンジはコウジさんであってコウジさんではない。そうなんですよね?」

「まあな。」

「ま、いいや。」

「ああそうしておいてもらったほうが助かる。じゃ行くぞ。次の仕事先はドイツだ。準備を始めよう。」

「了解っ!!」








後書き
 どーもマコTです。これはなんとなく僕が作った、小説です。
どうか見てやってください
感想はBBSメール で。

戻る